2025年3月22日、全国モルックカレンダーを運営しているjaja patatas(ヤヤ パタタス)主催の大会として、「jaja SHORYU」を開催しました。25歳以下の若手選手限定で、4位までの入賞者には総額38,000円の大会遠征費サポートを実施するという試みを行いました。
➡️⬇️↘️ jaja SHORYU結果・遠征サポート
— Mölkky clan jaja patatas(ヤヤパタタス) (@mcjp_official) 2025年3月22日
🐲じゅんぺい(DYUbee)20,000円分
🥈ひんがし(DYUbee)10,000円分
🥉ヨコ(y2j)5,000円分
🎖️リョウ(クランブルー)3,000円分https://t.co/iWrgWznvDB#モルック #jjptt pic.twitter.com/JBWnK7zRKL
本記事では大会の振り返りを、主に運営の面から記録します。
jaja SHORYUのきっかけ
jaja patatasは「全国モルックカレンダー」や「モルック関東プライムリーグ」をはじめ、モルックをやりたい・楽しみたいプレーヤーを応援するためのプロジェクトを運営していますが、jaja SHORYUも同じ思いで始めた企画です。
キッカケは、格闘ゲームの大会で、「EVO」というラスベガスで開催される最高峰の大規模大会に参加したい若手選手をサポートするというコンセプトの大会の存在を知ったことです。参加条件を若手・プロとしてスポンサードを受けていない選手に限定し、優勝すると現地への渡航費などをサポートするというものです。
ラスベガスに1週間前後滞在するとなると、実際のところ50万で済むかも分からないくらい大きな費用となるため、モチベーションと実力を併せ持つ選手にとっては絶好のチャンスとなっています。
『スト6』22歳以下限定大会「ハイタニ登竜門オープン」結果。優勝者はEVO挑戦支援
これをみて、この規模のサポートは難しいにしても、最近どんどん増えている若手選手をサポートするための企画をやりたいと思いました。「若手に絞る理由はないのでは?」と思うかもしれませんが、一般的に若い世代はモチベーションや体力はあるものの遠征費や渡航費などが足りなくなるというハードルがあるので、そういった部分をサポート・また、長くモルックに携わって将来的に業界の中心として活躍してほしいという思いもあります。
また、遠征サポートをおこなう条件を「大会入賞」に定めました。例えば、これまで世界大会に行くプレーヤーがクラウドファンディングを駆使して資金を稼ぐ事例はありましたが、クラウドファンディングは「支援を受けたからには結果を残したり、十分なリターンをするために作業しなければならない」というプレッシャーもあります。実力によってサポートを受けた場合は、比較的そういった重圧には繋がりにくいのかなと思っています。
サポーター募集
という思いつきだったのですが、自分以外に支援をしてくれる人がいるかは未知数でしたので、「まず自分から出す」ことを重視し、優勝者には1万円分サポートする、という設定を最初に掲げました。
結果的には、多くのサポーター様が賛同してくださり、2位~4位の選手も遠征サポート対象とすることができたため、参加選手にとっては大きなモチベーションになり、良い事例を作れたと思います。賛同者の方々には、改めて感謝いたします!

サポーターへこまめに報告する
もはやスポンサーといってもいいサポーターの皆様には、こまめに報告をするように心がけました。運営がうまくいっているということを見せる目的です。
- 選手のオープンチャットにも参加してもらう
- エントリー状況を報告する
- 選手やSNSでサポーターを紹介する
- 大会前後に無事進行していることを報告する
- 試合動画を公開する
- 遠征費サポートの流れについて事前に説明する
などといった連絡をしています。ここに、今回できなかった「試合開始前の説明時、サポーターの読み上げをしている様子を動画にして残す」といったこともしておけば良かったと反省しています。
コンパクトに運営するために
今回このようなコンセプトの大会を行うのは初めてで、自分自身、いつもはミニ大会で、ワンデーで32人参加という規模の大会を実施したことはありませんでした。
本来であればもう少し参加者を増やしたいというのもありましたが、まずはできる範囲で成功事例を作りたかったので、最悪1人で運営してもなんとかなる規模やシステムでやろう、という方針を固めました。
そこで、運営の作業を減らすための工夫をいくつか行いました。ちなみに、大会当日までの準備については1人で対応できると判断したので、以下はすべて個人で進めました。
- 大会告知
- 大会記事作成
- エントリー管理
- オープンチャット作成・参加者連絡
- トーナメント抽選
- スコアシートなど資料作成
- 質問対応
場所の提供
ただ、会場の準備についてはノウハウやツテを持っていなかったので、「横浜鶴見モルック会」様にご協力いただき、鶴見花月園公園を押さえていただきました。横浜鶴見モルック会様は選手遠征サポートにも賛同していただいており、改めて感謝を申し上げます。
運営作業を減らすための工夫
スコアの集計や計算をしない仕組みにする
一番人手が必要になるのがスコアの集計や計算・チェックになると思ったので、それをしなくていいシステムにしました。具体的には、
- トーナメントのみにする
- 勝利または敗退が必ず決まるルールにする(全試合2セット先取制) ‐ 勝利・敗戦時のトーナメント移動先がすぐに分かるようにする
- 対戦相手が決まったら次の試合を案内する
- 他コートと試合開始・終了時間を揃えない
といった仕組みを採用しました。
特に32人→ベスト16に絞り込む最初のブロックは、最初の5試合までを選手自身だけで進行できるようにトーナメントを作成しました。これにより、1試合ごとに集計や案内の作業が入ったりすることなくノンストップで進行することが可能になります。

ベスト16以降は、対戦相手が揃ったら空いているコートにどんどん案内するようにしました。案内さえすれば試合自体は選手のみで回せるので、運営の作業は少なくなります。実際、ベンチで座ってのほほんと観戦している時間が多かったです。
使用するスコアシートも、予め対戦番号を1枚1枚に記載して用意していたので、進行度がすぐに把握できたりとスムーズになりました。
ちなみに、トーナメントの組み方や、ダブルイリミネーション方式での試合順などは、トーナメント作成サービスで仮のトーナメントを作成するなどして参考にしました。本当はトーナメントの進行や結果入力など実際に使ってみたいサービスなのですが、モルックとは相性が良くない(セットごとの得点が記録できない、3チーム戦など変則ルールに対応できない)ので一旦見送っています。
道具の準備
コートは8つ用意しましたが、各コートには以下をセットにして置いておきました。これで最初の5試合分はすすめてね!というメッセージです。
- クリップボード(A5)
- スコアシート(ベスト32→16の5試合分をまとめて)
- トーナメント進行の流れ説明
- ボールペン
- 3.5mのヒモ(キャンプ用パラコード)
これらをまとめてジッパー式のファイルに入れ、コート脇に置くことで紛失などを防ぎます。

ベスト16以降は対応する試合番号のスコアシートを渡す→試合が終わったらクリップボードごと持ってきてもらう→次の試合のスコアシートを…というループで進行することが出来ます。ベスト16以降はコートも決めず、空きコートにどんどん案内することでとにかく試合を回してもらうようにします。
スコアシートにルールも記載しておくことで、選手間で解決できる手助けをしています。

当日わかった課題としては、ジッパーファイルが風で飛んでいってしまうことです。風問題は全体的に発生したので、次回以降で考えたいところです。なんなら、ジッパーファイルごと選手に持ち帰ってもらうようにしてもアリ。
また、コート設営用には以下を用意しました。
- フラットマーカー
- 3.5mのヒモ
フラットマーカーは平型なので、投擲時に邪魔になりにくいメリットと、山形よりも風に強いのも特徴です。それでも投げるときに邪魔になりそうなときは、一旦どかしてもよいとアナウンスしました。

スキットルリセット用の3.5mのヒモはキャンプ用のパラコードを用意しました。ビニール紐などよりも耐久性があり繰り返し使用することを想定しています。3.5mに切ったあとは、先端をチャッカマンで炙ったりしてほつれないようにしています(ヒモを切るときはみゆきちさん、Freiheitひできちさんにご協力いただきました!)。
一番たいへんだったこと
時間がかかったのは当日のコート設営でした。ヨコ6m、タテ15mに設定したのですが、当日スタッフに来てくれたえつさん、スガラガさんがいなかったら選手に手伝ってもらうしかありませんでした。
厳密に歪みのない長方形コートを作るには、別途工夫が必要だなと感じました。
その他改善点
- トーナメント表や進行に関する案内を大きく貼り出すと、自発的に選手が見てくれるようになる。
- 案内が忙しくて動画収録が思ったより出来なかった。
- 動画を撮っている間はスマホが封印されるので、SNSで速報を投稿することができない。サブのスマホをデザリングしつつ使うなど工夫が必要
ルールや対戦環境の設定
対戦ルールには、繰り返しになりますが運営コストを減らす目的もあり、以下のシンプルな設定にしています。
- 2人対戦のトーナメントのみ ‐ 完全ダブルイリミネーショントーナメント
- 全試合2セット先取 ‐ ターン制限・時間制限なし
- ヨコ6m・タテ15m
- 同チーム・団体の選手は別ブロックに置く(抽選の引き直し)
更に、2セット先取の最終第3セットの先攻については、以下の優先順で決定するようにしました。
- 勝利したセットのターン数が少ない
- 2セット目までの累計フォルト数が少ない
- 2セット目までの合計得点が多い
- ドローショット
なるべくシンプルにする
今回は大会のコンセプト上、素直に実力を発揮できた選手が勝利に近づくルール設定にしたかったので、「紛れ」が少ないなるべく特別ルール的なものは用意しない方針にしました(全試合2先なのが辛かったとは思いますが…)。個人的にも、シンプルなルールだからこそ面白い試合になるし、それだけ選手を信頼しているからできるシンプルさでもあります。
ちなみにコートを広くした理由としては、選手のプレーポテンシャルを引き出してほしいこと、ディフェンス行動のリターンを大きくする目的があります(コートが狭いとディフェンスしたとしても効果が小さくなることが多い)。
最終セット先攻条件による積極的なプレーへの誘導
意図としては、「なるべく得点を考えないでプレーする」という方針があります。現状、多くの大会では最終セットの先攻を合計得点で決めています。予選通過条件においても重要な条件として設定されているパターンが多いです。
ですが、合計点による判定は、モルックの「50点ちょうどにすると勝ち」というコンセプトとは相性が悪くなるパターンがあります。例えば、
- 相手のラスト1投である⑩番スキットルはディフェンスせず、相手にとっては関係のない⑫番スキットルを倒し、最終セットの先攻権を獲得する。
といった行動パターンはよく見られますが、ディフェンスとしても効果がなく、場合によっては自分自身の50点を目指す目的としても直結しない、あくまで次セットの先攻をとりたいためだけの行動になってしまうことが多いです。
これはこれでルールに適した選択なのですが、50点を巡る駆け引きとはかけ離れてしまうため、例えば動画にしたときに視聴者にとっては退屈なプレーとして捉えられてしまうおそれがあります。積極性にも欠けていると言えてしまいます。
※個人的には「0点~49点は同価値」という多少過激な思想もあります。
そのため今回のように「早いターンで勝つ」ということにインセンティブ(動機づけ)を設けることで、積極的なプレー・チャレンジングな姿勢を引き出すことが出来ます。他のスポーツでも用意されているルールなので、イメージはしやすいと思います。
(バスケットボールにおける「24秒ルール(ショットクロック)」や、柔道の「指導」など。eスポーツに採用されるような対戦ゲームでも、積極的・攻撃的なプレーを引き出すためのゲームシステムづくりがされることが多いです)
このルールに設定することで、ディフェンス側も「せめて相手の勝利を遅延しよう」という目的も生まれ、モルックの原始的な面白さである50点をめぐるシンプルな攻防に誘導することができるようになっています。シンプルなプレーや見ている人たちにとっても分かりやすいし、せっかく若い選手に集まってもらっているので、積極的なプレーを大会で繰り出す習慣がついてくれればいいなという思いもあります。
「フォルト数の少なさ」については絶対この条件を用意しないといけないわけではありませんが、「合計得点条件の優先度を減らす」ために2番目の優先順に持ってきています。
セコンド制度
また、「セコンド」のルールも追加しました。これについては完全に試しですが、
- 条件付き、すでに敗退した選手または大会に参加していない選手・スタッフから助言を聞くことが可能
- ※1セット1回のタイムアウト時に限る
- ※1つの試合につきセコンドにつけるのは1人まで
- ※主催者以外
といった助言を貰える制度を設けました。現状は(モルックの「考える」面白さを重視した)「参加している選手自身だけで考える」という思想が徐々に浸透している段階で、こんど行われる個人戦大会「日本モルック選手権」についても、選手以外の助言が禁止される文言が明記されています。これについて私自身のハッキリとした意見はありませんが、もしセコンド制度があったらどうなる、という実験の一つです。
セコンドの使用率は10%もなかったと思いますが、実際にしようされた場面では、「刻みではなくラストスローへのチャレンジを後押しする」といった助言もあり、客観的な視点からの冷静なアドバイスと、プレッシャーを感じている選手への後押しが見られました。
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