
本記事は2026年3月22日開催の「Mölkky Mania THE FINAL(モルマニファイナル)」特別企画として、大会運営のMölkky Mania様から寄稿いただいた内容を掲載しています。
2025年3月、全国各地の厳しい予選を勝ち抜いた猛者たちが一堂に会するMölkky Mania Presents 2025 FINAL CHAMPIONSHIP。
今回スポットを当てるのは、5月に開催されたMölkky Mania Kawasaki -OPEN- Season.4-1において、悪天候をものともしない圧倒的なパフォーマンスで優勝を飾った「チーム右利き」のお二人です。
- 1. 未知を探求し、言語化するモルック界の開拓者:もるまさ(古田優弥)
- 2. 型にはまらない独自のスタイルで世界一を目指す:にしむー(西村悠希)
- 3. 土砂降りの雨を切り裂く「重い棒」。ごーちゃんの驚異的なブレイク
- 4. いざ、FINAL CHAMPIONSHIPへ
- 全国モルックカレンダーニュースについて
メンバーは、日本のモルック界を牽引するトッププレーヤーであり、YouTubeでも絶大な影響力を持つもるまさ(古田優弥)さんと、2025年に解散した強豪チームRATELにも所属し、常に最先端を走り続けてきたにしむー(西村悠希)さん。そして、今回のチャンピオンシップには惜しくも不在となってしまったごーさんの3名です。互いの実力を認め合う相思相愛のドリームチームが、川崎の地でどのような軌跡を描いたのか。その強さの秘密と、彼らがモルックに懸ける並々ならぬ情熱に迫ります。

1. 未知を探求し、言語化するモルック界の開拓者:もるまさ(古田優弥)
【所属チーム:iGo軍団、SEVEN‘S 】
もるまささんがモルックに出会ったのは、テレビ番組でさらば青春の光の森田さんがプレーしている姿を見たことがきっかけでした。「これなら俺でもできそうだな」という純粋で飾らない感想から、彼の長きにわたるモルック人生はスタートします。

「もるまさ」誕生の戦略的秘話
「もるまさ」という特徴的なモルックネームの由来は、極めて戦略的です。もともとは特別なニックネームを持っていませんでしたが、モルック外のコミュニティで「あいつはめちゃくちゃモルックをやっている」と噂になり、自然発生的に「もるまさ」と呼ばれるようになりました。
その後、2023年7月に自身のYouTube活動を本格的に開始する際、彼はあることに気づきます。対戦相手から「なんて検索すれば動画が出ますか?」と聞かれた時に、毎回リンクを送る手間を省きたいと考えたのです。そこで「検索して一番上に出る名前」を意識し、「もるまさ」と検索をかけたところ、誰もヒットしなかったため、この名前を正式に採用しました。現在では「もま」と略して呼ばれることも多く、彼自身もその音感を非常に気に入っています。
フランス世界大会での「愛」と、留学の空白期間が生んだ熱狂
モルック歴6年目を迎える彼ですが、競技として完全にハマったのには明確なターニングポイントがありました。それは2022年にフランスで開催された世界大会です。当時はまだ現在のように毎日投げ込んでいたわけではありませんでしたが、この世界最高峰の大会に出場し、ベスト8という素晴らしい結果を残します。この望外の快挙に対し、彼は「自分はモルックという競技に愛されている気がする」と強烈に感じました。この瞬間の高揚感こそが、彼をモルックの底なし沼へと引きずり込んだ最大のきっかけでした。
しかし、その後すぐ留学が重なり、モルックをやりたい気持ちを抱えながらも、思うようにプレーできないもどかしい時期を過ごすことになります。そして留学から帰国した後、溜め込んでいた情熱を爆発させるかのように、彼はほぼ毎日モルック棒を握り、徹底的に練習に打ち込む日々を送るようになりました。
「ニュースポーツ」の未知を探求し言語化する飽くなき研究者
もるまささんがモルックを長きにわたって続けられている最大の理由は、この競技が持つ「未知なる部分の多さ」にあります。彼にとってモルックは、単なるマイナースポーツではなく、完全に「ニュースポーツ」という位置付けです。1996年にフィンランドで発祥してからまだ約30年しか経っておらず、どのように体を動かせば正確に投げられるのか、どのようなメンタルを保てば勝利に近づけるのかといった、いわゆる教科書的な正解がまだ存在していません。
だからこそ、彼はモルックを探求する研究者としての側面を強く持ち合わせています。YouTubeでの活動を通じて、自身の感覚や技術を丁寧に言語化し、発信し続けることで、未知の領域が少しずつ解明されていく快感に酔いしれています。
「5年、6年経っても、知れば知るほどさらに分からなくなる。だからこそ、そういった好奇心がブレずに持ち続けられている」と語る彼の探求心は留まることを知りません。
自己評価としても、「自分自身の体の動かし方やプレースタイルに関する理解度は7割ぐらい」と手応えを感じる一方で、「モルックという競技全体に対する理解度は、人それぞれの視点や考え方があるため、まだ2〜3割に過ぎない」と語り、常に謙虚な姿勢で競技と向き合っています。
「突き刺し」の時代を創り、行き着いた究極の「耐え」
もるまささんのプレースタイルを語る上で欠かせないのが、彼が日本のモルックシーンに多大な影響を与えた「突き刺しカッサ」と「突き刺しギャッサ」という高度な技術です。こ
れらの技は、モルック棒の角度や投げる強さを極めて精密にコントロールする必要があるショットであり、彼の影響力によってまさに「突き刺しの時代が到来した」と言われるほどの功績を残しています。周囲からも、これらの斜めの技が彼の得意技であると広く認識されています。
しかし、本人の口から出た個人的な一番の得意技は、全く次元の異なるものでした。それが「耐え」です。彼が定義する「耐え」とは、「ギリギリ勝つ力」であり、なんだかんだ勝つための戦術的かつ精神的な強さを指します。大逆転を狙う場面だけでなく、一手差の緊迫した局面において、なぜか自分たちに良い方向に転ぶことが多い状況を作り出すこと。相手が少しでもミスをすれば一気に捲れるようなプレッシャーをかけ続ける展開を構築することが、彼の真の武器なのです。
また、「好きな技」について尋ねられると、彼は「正直、ない」と断言します。「技は戦術を組む上での引き出しの一部でしかなく、これが好きだから投げるという感覚はない。盤面に応じて最適な技を投げたい」と語り、勝利のために最適な一手を選択する思考が浮き彫りになります。
緊張とリラックスでパフォーマンスを最大化させるために:己の感情を理解するメンタルコントロール
大舞台での強さについて、もるまささんは自身のメンタル特性を深く分析しています。相方のにしむーさんが感情の波を合わせてゾーンに入るのが上手いのに対し、もるまささんは「自分がそれをしようとするとプレッシャー過多になってパフォーマンスが落ちてしまう」という自覚を持っています。
そのため、彼が緊張とリラックスの中でパフォーマンスを最大化させるために行っているアプローチは、「ネガティブな感情の落ち込みを減らすこと」です。「大舞台で活躍するかどうかは基本的に全部メンタルの話だと思っている」と語る彼は、「今自分がどういう感情なのか、どういう状況なのかを理解するようにしたこと」で結果も出るようになったと言います。
己の心を客観視するこの高度なメンタルマネジメントこそが、彼を真のトッププレーヤーへと押し上げた原動力なのです。
2. 型にはまらない独自のスタイルで世界一を目指す:にしむー(西村悠希)
彼がモルックにハマったのは「さらば青春の光」の森田さんがYouTubeで公開していた、モルック世界大会の動画を見たことがすべての始まりでした。
当時学生の彼は、動画の中で世界を相手に戦うプレーヤーたちの姿を見て、「もしかしたら、自分でも世界で戦えるかもしれない」という強い直感を抱きました。「今思えば勝手に奢った気持ちになっていた」と彼は当時を笑いながら振り返りますが、その根底には「物を投げる」という動作に対する絶対的な自信がありました。
【所属チーム:ALLIN、Kestää】

強烈な悔しさが火をつけた「第2フェーズ」と、個性が生きる競技の魅力
彼がモルックに深くのめり込んだ過程には、明確な「2つのフェーズ」がありました。
第1フェーズは、始めた当初の大学生時代。純粋に当たる楽しさから、時間を忘れてずっと投げ続けていた熱狂の時期です。
そして彼をトップアスリートへと変貌させた第2フェーズは、始めてから約4ヶ月後に出場した熊本での日本大会でした。この大会で彼はベスト8まで進出するものの、あと一歩のところで敗退してしまいます。「その時の負けがとにかく悔しすぎて、完全に火がついた」と語るように、この強烈な悔恨が、彼の競技に対する向き合い方をより一層ストイックなものへと昇華させる決定的な引き金となりました。
長年競技を続けられている理由として、彼は「マイナースポーツならではの多様性」を挙げます。モルックには絶対的な正解のフォームがなく、個性が結果に直結します。
「自分のやりやすい形、良いと思った独自のスタイルで、一番を取れる可能性が高い競技だ」という確信が、日々のモチベーションとなっています。また、全国を回る中で出会う人々との繋がり、競技の枠を超えたコミュニティの温かさも、彼がモルックを愛してやまない大きな理由です。
勝負強さと、無茶したら勝てる盤面を楽しむ集中力
にしむーさんの最大の武器である「勝負強さ」は、彼の技術とメンタルが高い次元で融合した結果生まれています。
技術面で直近よく言われる得意技が「ふわり」です。どんなに狭い幅の隙間を通す状況でも、あるいはある程度余裕がある盤面であっても、ふわりとした軌道で確実に決めきる高い精度を誇ります。そしてメンタル面において、彼は「安定感はあまりないかもしれないが、大舞台で最後決めきる力はある」と自負しています。本当に大きい大会の局面では、自分でも驚くほど集中力の質が変わると言います。
特に彼が好きなのが、「無茶したら勝てる盤面」です。「これ取ったら大まくりいける」「これ取ったらギリギリ勝てる」といった極限のプレッシャーがかかる局面において、彼は難易度の高い技を選択し、それを成功させることに無上の喜びを感じています。ヒリヒリするような勝負所でこそ輝くこの特異な集中力と強心臓が、彼を幾度も頂点へと導いてきました。
なんでもできることと後悔を残さないための徹底した雰囲気作り
チーム戦において最も必要なスキルとして挙げるのは「なんでもできること」です。「数回に1回しか回ってこないチーム戦で、盤面が思い通りにいかなかくなるのはよくあることだが、とにかく自分の番でチームとして最も良い選択をするために、全ての技で取れる技術とイメージをつけておくことを心がけています」正直順手だけ投げられたらどれだけ楽かと思う日もあると語るにしむーさんですが、最後行くしかないとなった時には取り切るために準備をすることが大切だといいます。
また、彼はチームメイトのパフォーマンスを最大化するために、まず味方のタイプを冷静に観察します。声をかけられた方が気持ちが乗り、パフォーマンスが上がるタイプであれば、ガンガン声をかけて鼓舞します。逆に、自分の世界に入って深く集中したいタイプであれば、無理に声をかけず見守るという柔軟な対応を見せます。
そして彼には、「自分の投擲に後悔がないように腹をくくる」という信念があります。大会後に「あーすればよかった」と思った経験が多々あります。ただ後でそう感じても、大会の結果は変わりません。それなら大会時点でのベストを出し尽くし、「これで負けたら実力不足。また練習するしかない。」と思えた方が、自分の強さの糧にできると思うからです。
この経験から、チームメイトが投げる前に必ず「事前に言っておいた方がいいことはありますか」と確認し、後悔の種を未然に摘み取ります。この細やかで徹底した声かけと気配りが、チーム全体のパフォーマンスを底上げし、どんな状況でも揺るがない強固な一体感を生み出しているのです。
3. 土砂降りの雨を切り裂く「重い棒」。ごーちゃんの驚異的なブレイク
チームのチャームポイントを、もるまささんは「右利きであるところ」、にしむーさんは「ミステリアスなところ」と表現します。全く異なる視点の答えですが、そこには互いの実力を認め合う余裕と信頼が垣間見えます。
そんな彼らが5月の川崎大会で優勝できた最大の理由は、今回チャンピオンシップには不在となってしまったごーさんの圧倒的なパフォーマンスにありました。
大会当日は、びしょ濡れになるほどの悪天候。コートには水溜りができ、モルック棒もスキットルも水分を含んで重く滑りやすくなるという、プレーヤーにとって極めて過酷なコンディションでした。しかし、ごーさんはその水溜りの中で、ブレイク(最初の投擲)で12本を獲り続けるという驚異的な離れ業をやってのけたのです。
もるまささんが「本当に棒が強い。あの人が投げると棒が重いんだよね」と感嘆し、にしむーさんも舌を巻くほどの、物理的に「重く強い棒」。天候すらも味方につけるかのようなごーちゃんのこの無双状態が、チーム右利きに絶対的な優位性をもたらし、見事優勝へと導きました。彼らにとって、この優勝は3人の力が完璧に噛み合ったからこそ得られた、かけがえのない栄冠なのです。
4. いざ、FINAL CHAMPIONSHIPへ
今年の目標を、もるまささんは「日本一を獲る」、にしむーさんは「世界一」と、それぞれ極めて高い場所に設定しています。日本の頂点、そして世界の頂点を見据える彼らにとって、このファイナルは絶対に負けられない重要な試金石となります。
モルックの未知を探求し続け、日本の戦術とメンタルコントロールを一段階引き上げたもるまささんと、己のスタイルを貫き、驚異的な勝負強さで最前線を走り続けるにしむーさん。日本のトップシーンを牽引する二人の天才が融合した「チーム右利き」が、共に戦ったごーちゃんへの深い感謝を胸に、ファイナルの舞台でどのような伝説を生み出すのか。彼らは今、頂点だけを見据えて、重く強い意志と共にモルック棒を握りしめます。
取材・文:Mölkky Mania 永濵侑
🖋️特別企画として毎日投稿していたモルマニファイナル出場チーム特集も、本日の記事で最終回となりました!皆さんの"推しチーム"はできましたか?当日会場や配信などで是非観戦を楽しみましょう!(全国モルックカレンダー編集担当)
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